
8月巻頭言「母を慕いて」
今年の夏は、北海道でも暑い日が続きます。涼しい北海道はどこに行ったのかと問いたくなります。そんな暑い夏でも、お盆になると都会に出て行った子供たちが、孫を連れて実家に帰省し、それを迎える側も、嬉しいやら忙しいやらで、暑さもそこそこに、元気な顔を見るためについつい頑張ってしでしょう。親に会う機会が少なくなっている時代において、何かにつけ理由をつけて照れずに帰省ができること、親の元気な顔を見て、安心してまた自分の場所に戻ることも、また大切なことであろうかと思います。家族という関係の中には、神様が与えられた「愛の交わりの基礎」があり、それを自らの目で確認できることは、自分の生きる基礎を確かめることです。主の平和がそこにあります。
また、8月と言えば終戦記念日です。戦争の愚かさを知り、またそれをしっかりと次の時代に伝えていくのは、わたしたちの大切な使命と言えます。教皇ヨハネ・パウロ二世も「戦争は人間の業(わざ)です」と言っています。決して、この愚かさを繰り返さないように、家庭においても、社会においても、しっかりとこの歴史を受け止めて行くことも大切なことです。
先日、鹿児島に行った際に、特攻隊の記録を展示している「知覧特攻平和祈念館」に行き機会を得ました。そこに展示されていた、ある特攻隊員の母親への手紙が、ものすごく心に残りました。ほかの隊員の手紙も多数展示されておりましたが、この手紙だけは他のものとは違っていて、あまりに強い印象を受けました。これを読んで、皆さんは何を感じられるでしょうか。
相花信夫少尉 母にあてた手紙
「母をしたいて」
母上お元気ですか。
長い間本当にありがとうございました。
我、六歳の時より育ててぐだされし母。
継母とは言え、世のこの種の女にあるごとき不祥事は一度たりとてなく、
慈しみ育てくだされし母。
有り難い母、尊い母。
俺は幸福だった。
遂に最後までお母さんと呼ばざりし俺。
幾度か思い切って呼ばんとしたが、なんと意志薄弱な俺だったろう。
母上お許しください。
さぞ寂しかったでしょう。
いまこそ、大声で呼ばしていただきます。
お母さん お母さん お母さんと。
