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12月巻頭言                   

「おもしろくなってきやがったぜ」

 今年は早くに雪が降り、いよいよ冬らしくなってきました。旭川は寒いですね。街では、にわかに活気づいて、クリスマス年末商戦が始まり、少し気持ちがワクワクしてきます。しかし反面、このところ仕事も増え、年末の忙しさや、その他にも仕事が重なったりし、年齢的にも、少し体力的に厳しくなってきたことを感じます。こういう時は、さらに、予期しない別の仕事を頼まれたりして、やることが重なったりするものです。この状態になると、わたしはいつも逃げたくなったり、仕事が適当かつおろそかになりがちになる自分がいます。しかし、そんなときに、わたしには自分のやる気を出す「魔法の言葉」があります。

それは「おもしろくなってきやがったぜ」です。元ネタは、アニメの「ルパン三世」です。主人公のルパンは、いつもピンチになればなるほど、この「お~もしろくなってきやがったぜ~」を言ってニヤッと笑う。クリエイターは、視聴者に、ルパンがこのピンチを知恵や才能でクリアしたり、敵の裏をかく様子や、なによりも「ピンチを楽しむ姿」を表現しているのだろうと思います。そして、ルパンのようにこの言葉を自分で使ってみると、今この仕事を与えられている意味を改めて考る自分や、仕事へのモチベーションが上がる自分がいる。だから魔法の言葉なのです。

わたしたちは、目の前の自分にとって大変で、面倒くさい苦労すると思う出来事に、どんなマイナス面があるかということを見つけ出すことに関しては天才的です。悪いことを見つけ出すのは簡単で、それをやらない理由を探し出すのはいつでも得意なんです。しかし、この魔法の言葉はその反対で、その物事の中に「善さ」を探し出そうとする視点に自分の気持ちを変えてくれます。この大変な事態の中にどんな「善さ・おもしろさ」があるんだろう、という期待感に変えてくれる。だからやる気も出てくる。

それに加えて、わたしたちには「信仰」という強い武具も身に着けています。わたしたちはその出来事の結果を、どんなことがあろうと神様にゆだねるということができます。「いま、わたしにこの仕事をさせようとしているからには、何かしらの意味があるのでしょう? だったら結果はどうあれ、あなたに任せます。わたしは全力で取り組みますが、それでうまくいかなくても、何とかしてくださいね。」という気持ちで神様にゆだねる。そうなるとある意味、困難を目の前にした「神様との共同作業」という面も出てきます。

待降節前に読まれる福音は「終末」を予感させるような箇所が多くなります。それが起こるときには、とんでもないことが起こるから準備していなさいという意味がありますが、この終末の預言を、どのように受け取るかが大切です。確かに世界を見渡しても、世界の終わりが近いような感じもなくありません。「人の子が来るのは、ノアの時と同じである。」と聞けば「大地震と、それによる大津波が来るに違いない」と思い、「一人は連れていかれ、もう一人は残される」と聞くと「あの国家による拉致問題か」と怖くなる。わたしたちは終末というものを、恐れ、そのしるしをあらゆるものの中に見いだそうとします。そしてそのしるしが聖書の中に見られるとなると、その恐怖に裏付けを与えることにもなりかねません。神様は、聖書を通して、わたしたちを怯えさせて震え上がらせて従うよう、脅しをかけいるのでしょうか。

けっしてそうではありません。神様のなさることは必ず大きな善に向けられているはずなのだから、むやみに恐れるべきものではないのです。こんな時にこそ、恐れの中にも小さな光を見出す魔法の言葉「おもしろくなってきやがった」の一言が必要とされます。神様、そしてイエス様がなさることには、必ずその先に大きな希望がある。どんな素晴らしいことが、面白いことが起こるんだろうとワクワクして待つことが大切です。

イエス様の誕生は、まさにそんな小さな喜びが、大きな喜びの種になる光の降誕です。どんな苦境にあっても必ずイエス様が希望を与えてくださるし、その希望はどんなものになるかはわからなくとも、きっと素晴らしいものであると信じることができる。それが信仰という武具の正体です。その武具を身に着けると、わたしたちを取り囲む苦しい状況は、喜びと希望に彩られるものと変えられていきます。そこに福音の神秘があります。イエス様の降誕に胸を躍らせながら、待降節を心豊かに過ごして参りましょう。

(※この文章は、令和3年の12月に書いた千歳教会に向けての巻頭言を、新たに加筆修正したものです。)

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