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「病者の日を迎えて」

クレト中村 道生神父

 

 私たちの主キリストは、いつも貧しい人に手を差し伸べ、病に苦しむ人をいやし、「わたしは世の終わりまであなた方と共にいる」と、約束してくださいました。そして、十字架の傍らにおられた母マリアと愛する弟子を見て、「婦人よ、あなたの子です」。「見なさい、あなたの母です」と仰せになりました。以来、マリアは教会の誕生を記念する聖霊降臨の時をはじめ、いつも私たち教会と共にいて、祈り、とりなしてくださいました。ちなみに、教会が公認している、「聖母のご出現」は23あり、なかでも、「ルルドの聖母」の出現はもっとも有名で、今も多くの人が巡礼に訪れています。私も一度、大阪・生野教会にいたころ、信徒の方々と巡礼に行きました。

 聖ヨハネ・パウロ二世教皇は、この「ルルドの聖母」の出現を記念する2月11日を1993年から、「世界病者の日」に制定されました。今年は、神居教会で信徒の皆さんに「病者の塗油」をしましたが、実は私が一番受けたい秘跡でした。私は今9枚も、いろんな病院のカードを持っていますが、なかでも、認知症が気になっていて、病院に行くと、先生には高齢者にはよくあることだといわれました。兄弟たちにも、「認知症が気になると言っているうちは大丈夫。食事をするのを忘れたら…」といわれました。

 それで、私は霊的認知症というのを考えてみました。マルコの福音書8,17-18で、イエスは弟子たちがパンを持ってくるのを忘れて互いに議論しているのに気付かれて、「どうしてあなた方は、パンを持っていないことを論じ合うのか。まだ分からないのか。悟らないのか。あなた方の心はそんなに頑ななのか。以前私が5つのパンを5千人に与えたではないか」と、厳しく叱責されました。

 私も、いつも体の不調を危惧し、物忘れを心配しているけれども、最後の晩餐で、弟子たちを極みまで愛し、ご自分をパンとぶどう酒の形で与えられた主が、毎日のミサで私の心に来てくださっていることを忘れています。典礼聖歌411に“私は門の外に立ち“という聖歌があります。この歌詞は黙示録3,20からとられています。

   私は門の外に立ち 扉を 叩いている もし声を聞いて 門を開けるなら

    私は 中に入り あなたと共にすむ

     扉の外には キリスト こころを 開いて 神の言葉と 愛とをうけよう

    キリストは いまも 叩く 心の扉を

 

「世界病者の日」では、全世界の病気や災害で苦しんでいる人々に、ふさわしい援助の手がさしのべられるように祈るとともに、病気の人自身も、苦しみの意味をよく受け止めるようにと言われていますが、教皇フランシスコは今年のメッセージで「戦争はもっとも恐ろしい社会の病であり、いちばんの弱者が、もっとも高い代償を払わされるのです」と述べておられます。

この四旬節の間、世界で戦争と災害で苦しんでいる人々に、何か具体的な支援の手を差し伸べられたらと願っています。

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