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 「教会の母聖マリア」に祈る

​                            クレト 中村 道生神父

 

 福音史家聖ヨハネは、最後の晩餐でイエスの遺言を、詳細に13章から17章にかけて述べています。

“イエスは、この世から父のもとへ移るご自分の時が来たのを悟り、世にいる弟子たちを愛して、終わりまで愛し抜かれた。”と述べ、さらに、“私は新しい掟をあなた方に与える。私があなた方を愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。”と、イエスの言葉を伝えています。(ヨハネ13,34)(15,12)。

一方、マタイ、マルコ、ルカの共観福音書では、ユダヤ人の指導者たちの「最も大切な掟は何か」という問いかけに対して、イエスは、「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くしてあなたの神である主を愛しなさい。』これが、いちばん重要な、第一の掟である。第二もこれに似ている。『隣人をあなた自身のように愛しなさい』」と、旧約聖書の教えから答えておられます。(マタイ22,34-40)

 また、共観福音書は天の父なる神については、『空の鳥、野のユリを見なさい』と言って、「慈しみ深い方」と述べるぐらいですが、聖ヨハネは、天の御父と御子の関わり、交わりについて詳しくのべ、私たちもこの交わりに招かれていることを告げます。とくに、それは御子が御父を通して、聖霊を派遣してくださることによって実現します。『私は父にお願いしよう。そうすれば、別の弁護者を遣わして、いつまでもあなた方とともにいるようにしてくださる。その方は真理の霊である。その方を、世は、見ようとも知ろうともしないので受け入れることができないが、あなた方はその方を知っている。その方があなた方のもとに留まり、あなた方のうちにおられるからである。』と。(ヨハネ14,16,17)

 このことを、教会は、典礼歴を通して、復活節の最後に、「主の昇天」と、「聖霊降臨」によって記念し、祝います。 

私たちは今、一年中でいちばん美しい月、聖母月を迎えていますが、まさに、この時に、主の昇天と聖霊降臨を祝います。聖ルカは、その福音書の初めに、主の降誕の神秘を、マリアへのお告げによって伝えましたが、聖霊降臨の神秘を使徒行伝のはじめに、「聖母とイエスの弟子たちは、最後の晩餐が行われた高間に集まって、心を合わせてひたすら祈っていました。」と、伝えています。(使徒1,13,14)

さらに、聖ヨハネの福音書で、“イエスは、十字架のそばにおられた母と、愛する弟子を見て、母に、「婦人よ、ごらんなさい。あなたの子です」と言われ、それから弟子に、「見なさい。あなたの母です。」と言われた。この時から、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った。”とあります。

                              (ヨハネ19,26-27)

 こうしてキリストの母マリアは初代教会から現代にいたるまで、「教会の母」として敬愛してきましたが、聖パウロ六世教皇は第二バチカン公会議で、「教会の母」の称号を荘厳に宣言され、現教皇フランシスコは、「教会の母聖マリア」の記念日を制定すると共に、この日を教会暦の「聖霊降臨」の翌日の月曜日に加え、全教会で毎年祝い、その取次ぎを願うようにと望まれています。

 ちなみに、5月13日は、「ファチマの聖母」の記念日ですが、約100年前に、ファチマの3人の子供たちに現れた聖母マリアは世界平和とロシアの改心のためにロザリオの祈りを捧げるようにと願っておられます。各教会でも、聖母月やロザリオの月には共同で唱えているところが多く、個人でもロザリオの祈りを愛用されている方は多いと思います。私も毎日の散歩のときに、教会のため、また自分のためにもロザリオを唱えてきましたが、「教会の母聖マリア」の願いに応じ、これからは、まず、「世界平和とロシアの改心」のために祈らなければと思っています。

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