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国を治めるものの生活レベル

山本 孝 神父

 今年の10月20日、南米ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカが高齢などのため政界から引退するというニュースが流れました。

わたしはホセ・ムヒカがどんな人物か知らなかったので、「ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」という本をネットで購入しました。さらにもう二冊の彼に関する本を買いました。

ネットでホセ・ムヒカを検索すると、ホセ・ムヒカのスピーチ、ホセ・ムヒカ名言、生涯、絵本、映画など、様々な項目がヒットします。最初にわたしが手に入れた「ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」の表紙カバーに書かれていた文章から、この人物を簡単に紹介します。

ホセ・ムヒカ 1935年生まれ、第40代ウルグアイ大統領(2010-2015年)。妻はルシア・トポランスキ上院議員。趣味は園芸。事故によって3本脚となったマヌエラを含む数匹の犬や猫、鶏らと暮らす。2013年と2014年にノーベル平和賞にノミネートされる。

南米ウルグアイの首都モンテビデオ郊外の貧しい家庭に生まれ、父が亡くなるなどの事情により幼い頃からパン屋、花屋などで働く。10代から政治活動を初め、1960年代初期に当時の独裁政権に反抗する非合法政治組織トゥパマロスに加わる。ゲリラ活動による投獄は4度に及び、最後の投獄は13年間に渡った。1985年、出獄した数日後に行った初の大演説では、許す事、過去を乗り越えることの重要性を説いた。その後再び政治活動を始め、1994年には下院議員に選出され、トゥパマロス出身の初の国会議員となる。1999年、所属政党である人民参加運動(MPP)が最大議席数を獲得する。2012年、ブラジルで行われた国連会議でのスピーチが世界中から注目され、「世界でいちばん貧しい大統領」として質素な暮らしぶりも話題になった。

2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで「持続可能な開発会議」(通称:リオ+20)が開催された。各国首脳のスピーチが終盤にさしかかり、あらわれたのはウルグアイの大統領、ホセ・ムヒカ氏だ。彼が行った十数分のスピーチは、「伝説のスピーチ」として世界をかけめぐり、大統領らしからぬ質素な暮らしぶりとも相まって、彼を一躍有名にしました。「私たちは発展するためにこの世にやってきたわけではありません。この惑星に、幸せになろうとしてやってきたのです」

「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に多くを必要とし、もっともっと欲しがることです」

「今の地球の危機の原因は、環境の危機ではなく政治の危機なのです」。

 世界から集まった国の代表者を前に、地球の未来を考えるこの会議においても自国の利益しか考えない態度を痛烈に批判し、われわれの生き方が問題なのだと断じていたのです。彼は今では「世界で一番貧しい大統領」として敬意を込めて評され、このスピーチはこれからの世界のモデルを示す教材となっています。

10分ほどのこの演説が動画投稿サイトにアップされ、世界の手練れの政治家が集まる国際会議で、臆面もなく「理想」を話す姿が多くの人の心を打ったのです。日本のある出版社はこのスピーチを子どもにも分かる絵本にすることを思いつき、「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」という絵本が2014年3月に出版されました。

またホセ・ムヒカ大統領は日本からの招きで、2016年4月に来日して8日間、東京、京都、大阪、広島に滞在し、東京外国語大学で若い人たちに講演をしていました。

 今年11月3日には、アメリカ大統領選挙が行われました。わたしはカトリック信者のジョー・バイデン候補が新しい大統領に選ばれたことに一安心しました。同時に落選したトランプ大統領の横柄な傍若無人な態度に、大国のリーダーでありながら情けないと怒りを覚えました。ホセ・ムヒカ大統領は貧しく謙虚な生き方を選んだ人でした。『大統領官邸に住んで42人の職員を雇うぐらいなら、学校のために経費を使いたいので、住まない』『大統領は、多数派が選んでくれたんだから、多数派と同じ生活をしなきゃいけない』と彼は言っていました。大金持ちで資産家で、自分は誰よりも偉いんだと思いあがっているある政治家にはホセ・ムヒカ大統領のこの言葉を聞かせてやりたいと思いました。ホセ・ムヒカ大統領は世界の数多くのリーダーに会っていて、オバマ大統領とは三度会っています。そして、オバマ大統領については、とても頭が良く素晴らしい人だと感想を述べています。また彼は教皇フランシスコについては、自分は無神論者だが、フランシスコ教皇には強く心を動かされた。教皇は人々に救いの手を差し伸べたいと思っている。彼は素晴らしい教皇になるだろう。私の生き方と同じだ、と述べています。

またヨーロッパのリーダーの中では、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は圧倒的な存在感があったと評価しています。

 

 

 

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